クルマを選ぶ⑤ 「モデルイヤー」
前回、クルマには「フルモデルチェンジ」や「マイナーモデルチェンジ」があることを書いた。
で、実はこのほかにも「モデルチェンジ」は行なわれている。
日本の自動車メーカーではあまりないことなのだが、海外メーカーでは比較的一般的なのが「モデルイヤー」というモデルチェンジだ。
簡単に言うと「フルモデルチェンジ」はもちろん、「マイナーモデルチェンジ」ほどの仕様変更は行われないが、若干の変更や仕様の追加を毎年繰り返すことだ。
例えば・・・。
- カラーリングの追加
流行のカラーを取り入れたり、ターゲットを絞り込んだ(例えば、女性に向けたビビッドなカラーを使ったり)カラーを取り入れたりすること。
- 微妙な仕様変更
例えば、「バンパーの形がちょっと変わった」とか、「ウインカーの色が変わった」という程度の変更だ。
と言った具合に、本当にわずかな変更・仕様の違いに過ぎないのだが、クルマ選びを突き詰めていくと、ここまでこだわっていくことになる。
僕の事例でいうと、クルマではないのだけれど、オートバイを買う時にこの「モデルイヤー」にこだわった。
僕は数年前までKAWASAKIの「GPZ900R」というオートバイに乗っていた。
このオートバイには、全部で16種の「モデルイヤー」が存在する。
A1 1984年のデビューモデル。
A2 1985年モデル。カラーリング変更。映画「トップガン」にトム・クルーズの愛車として登場。
A3 1986年モデル。最高出力を落とし、逆に最大トルクをアップするエンジンの仕様変更。カラーリング変更
A4 1987年モデル。カラーリング変更。
A5 1988年モデル。ブレーキとエンジンを改良。カラーリング変更。
A6 1989年モデル。ラジエターに新装備を追加。カラーリング変更。
A7 1990年モデル。エンジンの出力変更。メーターパネル他デザイン変更。タイヤサイズ変更など。カラーリング変更。
A8 1991年モデル。日本仕様発売(国内規制緩和のため)。
A9 1992年モデル。カラーリング変更。
A10 1993年モデル。日本仕様のホイールカラー変更。
A11 1998年モデル。カラーリング変更。タイヤ規格変更。
A12 1999年モデル。ブレーキ(6ポット化)、タイヤ、リアサスペンション仕様変更。日本仕様最終モデル。
A13 2000年モデル。カラーリング変更。
A14 2001年モデル。カラーリング変更。
A15 2002年モデル。排ガス規制対応の仕様変更。
A16 2003年モデル。最終モデル。カラーリング変更。
仕様変更を繰り返しながら、約20年間という長きにわたって発売され続けるというのは、オートバイにあっては珍しいこと。それだけ名車ということが言える・・・というのは自分が乗っていたことの自慢だけど・・・とにかく、ほぼ毎年のように「何か」が変わっている。
これを「モデルイヤー」というわけだ。
で、僕がこだわったのは、「カラーリング」だ。写真は実際に僕が乗っていたものだが、このカラーリング「エボニー×パールコスミックグレー」と「ゴールドメタリックのホイール」は、A6、A7、A8、A14の4つの「モデルイヤー」にしかラインナップされていない。
では、その4モデルならどれでも良いかというと、そうではない。
ターニングポイントはA12。この時に「ブレーキ、タイヤ、リアサスペンション仕様変更」がなされている。そしてこれはGPZ900Rの性能面における最後のバージョンアップだ。
つまり、「A6〜8」と「A14」は、同じカラーリングであっても中身が違うということになる。
だから僕はこのオートバイを購入する時、ただ「GPZ900R」を探すのではなく、「2001年式A14のGPZ900R」の「エボニー×パールコスミックグレー」を探したわけだ。
こういうことがクルマ・・・特にアメリカ車やヨーロッパのクルマなど輸入車にもあるということを覚えておくと、クルマ選びが、より深く、楽しくなると思う。
クルマを選ぶ④「モデルチェンジ」
クルマの選び方と言いながら長い自己紹介のようになってきたので、
ここらで話の筋を戻していこう。
今回のテーマは「モデルチェンジ」。
クルマというのは、他の商品同様、技術の進歩とともにモデルチェンジを行う。
例えばほとんどの日本人が知っているであろう「トヨタ クラウン」の場合、
以下のような変遷がある。
初代 1955〜62年
2代目 1962~67年
3代目 1967〜71年
4代目 1971〜74年
5代目 1974〜79年
6代目 1979〜83年
7代目 1983〜87年
8代目 1987〜90年
9代目 1991〜95年
10代目 1995〜2001年
11代目 1999〜2007年
12代目 2003〜08年
13代目 2008〜12年
14代目 2012〜18年
15代目 2018年〜
https://gazoo.com/article/meisha_crownkiseki/150124_4.html
誕生から63年にわたって生産が続くクルマは、
世界的に見てもそれほど多くはない。
で、上に並べたモデルの変遷は、
クラウンの「フルモデルチェンジ」の歴史だ。
しかし実際のところクルマには、2種類のモデルチェンジがある。
- フルモデルチェンジ
完全な新型車として開発されるモデルチェンジのこと。
かつては4~6年くらいで繰り返されたが、近年は5〜7年くらいが一般的。
- マイナーモデルチェンジ
フルモデルチェンジを行う前に行われる、小規模な仕様変更のこと。
ライバル車との差別化のためなど、セールス上の施策として行われることが多い。
クルマを購入する際の思案ポイントに、
この「モデルチェンジ」のタイミングを挙げる人もいる。
- 在庫を処分するために価格が下がる。
- マイナーチェンジ後でモデルとして熟成し完成度が高い。
主な理由はこの2つ。
価格的にも、クルマの性能的にも、
確かに「フルモデルチェンジ直前」は狙い目と言える。
しかしその一方、納車されてすぐに最新モデルが出るわけだ。
フルモデルチェンジからフルモデルチェンジの期間を7年と考えれば、
その間の技術の進歩は凄まじい。
だから当然、フルモデルチェンジを待って購入する人も多い。
実際僕もそのタイミングでクルマを購入したことがある。
最初にプレサージュを買った時だ。
購入理由は、「家族が増えて3列シートがマスト」になったこと。
だから「購入時期」は確定していた。
その頃、すでにクルマの仕事をしていたこともあり、
プレサージュがフルモデルチェンジをすることはわかっていたが、
発売時期と出産時期があっていなかった。
そのために結局、旧型モデルを購入することになったのだ。
ディーラーに行き、「もうすぐモデルチェンジだよね」と言うと、
かなり大きく値引きしてくれた。
どれくらいかというと、
最新モデルの中間グレードの購入価格くらいで、
旧型モデルの最上級グレードを買えたくらい。
さらにオプション装備も、ほぼ自分の望んだものを装着することができた。
モデルチェンジのタイミングだからこそできた、買い方だったと思う。
クルマを選ぶ③「サイズ 大きめクルマ編」
生活環境の変化によって、選ぶクルマが影響を受けるということはよくあることだ。
20代の僕は、ワゴンとかミニバンとか、まったく興味はなかった。言い方を変えれば「嫌い」だったと言ってもいい。もちろん、当時もインプレッションの仕事をしていたし、自動車メーカーの仕事もしていた。だからおおっぴらに「嫌い」とは言えなかったが、個人的にはまったく興味はなかった。
しかしそんな僕も、ワゴンに乗らざるをえない生活環境になっていく。家族が増える、ということだ。
前回の「小さいクルマ」で最後に紹介したのは、MGミジェットというイギリスのオープン2シーター。つまり2人乗りだ。子供が生まれれば、当然家族全員が乗ることができない。
そこでクルマを買い換えることになり、手に入れたのが日産セフィーロ・ワゴンだ。
当時はレガシーとか、ボルボとか、とにかくブームで、国産大手もいろいろなサイズのツーリングワゴンをリリースしていた。その中で、このセフィーロ・ワゴンの最大の特徴はラゲッジルーム。国産モデルとしては最大の広さを誇っていた。このクルマに乗っていた頃、仲間とレーシングカートをやっていたのだが、リアシートを倒せば積めるということで、ウチのクルマが積載車になっていたこともある。
エンジンの排気量は2000ccと小さかったが、V6だったから、とても滑らかなフィーリングで好きなクルマだった。
で、このクルマともサヨナラすることになるのだが、そのきっかけは4人目の子供ができたから。6人家族となり、法律的に5人乗りのツーリングワゴンでは乗り切れなくなったわけだ。そこで初めてのミニバンを手に入れることになる。同じく日産のプレサージュというクルマだ。
フルモデルチェンジの少し前ということ。さらにホンダのオデッセイに比べて人気がなかったということでだいぶ値下げしていたので、最上級グレードを割安で買ったと記憶している。ぼってりとして、かっこよくはないのだが、もともとミニバンに興味がないから、それも気にならなかった。ただ、ミニバンの中でも小さめのものにしたことが後々災いする。
子供は大きくなるのだ!
数年もするとお兄ちゃん達の体のサイズが、プレサージュでは収まらなくなり、さらなるサイズアップを図らなければならず、どうせならと買ったのがコレだ。
メルセデスのV280。かなりでかいし、重い。2トンくらいあったはず。よく壊れると聞いていたが、幸いにもそれほどの被害はなかった。知り合いの工場で車検などの面倒を見てもらっていたのだが、「あたりだよ!」と言ってもらったくらい。こいつとは南会津とか、南相馬とか、福島によく出かけた。シートをすべて外して取り外せるので、流行の「車中泊」よろしく、後部に布団を敷き詰め、子供達を寝かせながらの夜間移動もよくやった。
6年ほど乗ったが、最後の最後にトラブル。ラジエターやらなんやらが怪しくなって、「いくらかかるかわからんよ」と言われ、買い替えを決意する。
そして再び日産プレサージュに戻るのだ。
2代目プレサージュは、前に乗っていたモデルよりもスタイリッシュなデザインと使いやすさを両立した、とても良いクルマだった。車内に小物入れが多かったり、リアゲートがガラスハッチだけが開いたり。ユーザーフレンドリーにするためにはどうすれば良いかが考えられた、理想的なファミリーカーだったと思う。
と、ここまで書いてきて今回も長くなったので、そろそろまとめを。
僕の場合、本当に「3列シート」のクルマが必要でミニバンを買った。家族が4人とかだったら、おそらくミニバンに乗ることはなかったであろう。
でも、当然だけど手に入れてしまえば、そこに楽しさはある。前述のV280で触れたように、シートを外して布団を敷き詰め、そこに子供を寝かして夜中に移動するなんてことはミニバンじゃなければできなかったことだ。そして、その思い出は子供達にとっても貴重なものになっているみたいで、今でもたまに彼らの口からその夜の話が出たりする。「面白かったなぁ、あの時のドライブは!」って。
その意味では、最初は渋々と選んだ「大きめのクルマ」だったが、それも「アリ!」という風に今では思っている。
クルマを選ぶ②「サイズ 小さいクルマ編」
さて、クルマ選びというテーマでスタートさせた本ブログだが、1回目はかなり内容があっちこっちに行った。そのために無駄に長くもなったので、今回からはタイトにしていきたい・・・って、この前振りがすでに無駄だな。今回のテーマは「サイズ」だ。
僕はもともと小さなクルマが好きだった。最初に買ったクルマがワーゲンだったことは前回書いたが、次に買ったのはコレだ。
イギリス生まれの大衆車「MINI」。そのうちの「MKⅢ」というやつで、確か自分のは1969年製。レプリカじゃなくて本物ではあるけど、それほど価値があるものでもない。
身長178cmの自分にとっては小さいのだけれど、「でっかくて、圧倒的なパワーで、ぐいぐい走るクルマ」よりも、「小さくて、軽くて、スイスイ走るクルマ」が好きだった。
それは初期衝動としての「サーキットの狼」の影響があったのかも。その漫画の主人公の愛車は「ロータス・ヨーロッパ」というクルマで、パワーはないんだけど、軽さを武器にしてコーナリングの速さでハイパワー車と戦っていた。そのイメージが残っていたのかもしれない。
入手したのが学生時代。安物だったから、よく壊れたけど、調子のいいときはゴーカートに乗ってるみたいで、めちゃくちゃ面白かった。
次に買ったのはコレ。
ホンダの「CR-X」というクルマ。昔から「ライトウエイトスポーツカー」という言い方があるんだけど、まさにそれを体現した、ホンダらしいクルマ。
ホンダは会社初の市販四輪車が「S800」という2シーターのオープンスポーツカーというメーカー。まさにその流れをくむクルマだった。パワーはないけど、キビキビとよく走った。パワステが付いてなかったので、ハンドルはとても重かったけどね。
で、その次は、いよいよブリティッシュ・ライトウエイトスポーツの雄を手に入れるのだ。
「MGミジェット」というクルマです。僕が買ったのは、もともとは赤いボディだったんだけど、上の写真と同じグリーンに全塗装して乗っていた。このグリーンは「ブリテッィシュ・レーシング・グリーン」という色で、イギリスのスポーツカーの伝統色。クルマも、カラーも憧れの1台だった。
という具合に、前回掲載した僕にとっての1台目であるワーゲンから、ミニ、CR-X、MGミジェットと、いずれもサイズは小さいクルマばかり。なぜかといえば、いずれも小さいからこそ得られる魅力が溢れているからだ。
それは例えば、こんな感じだ。
- 小さいながらも、その中で居住性をいかに高めようかという工夫に溢れいてる!
- 小さいために機能を割り切っているから、クルマのキャラが潔い!
- 小さいから前後左右の感覚がつかみやすく、運転がしやすい!
- 小さいクルマで、大きいクルマを抜くと爽快!
そんな魅力にはまって「小さい」クルマばかりを乗り継いできたんだけど、やがてその時代も終わりを迎える。
子供が生まれ、2シーターはもちろん、「小さい」クルマというわけにはいかなくなったのだ。
ということで、続きは次回「サイズ 大きいクルマ編」で。
クルマを選ぶ①「エンジンが好き」
さて、新しいブログを始めることになった。
テーマは「クルマ」だ。
なぜクルマかといえば、自分のこれまでの人生で、一番長い時間興味を持ち続けているものがクルマだったからだ。
はじまりは小学生の時。毎週の発売日を楽しみにしていた「週刊少年ジャンプ」で、名作「サーキットの狼」の連載が始まり、すぐに夢中になった。
この漫画をきっかけに「スーパーカー・ブーム」というのが巻き起こる。僕が暮らしていた千葉でも、「スーパーカー・フェア」的なものが行われ、その度に親にねだっては出かけて行き、フェラーリだ、ポルシェだ、ランボルギーニだ、マセラティだと大騒ぎしながら、見て回った。
F1と出会ったのもその頃。76年に富士スピードウェイで、日本で初めてF1が開催された。もちろん、僕は…見に行ってはいない。TBSで放送されたテレビを見ながら、やれフェラーリだ、タイレルだ、マクラーレンだと騒いでいた。
まさかそれから20年くらいのちに、自分がF1の専門誌の編集部に入り、オーストリア、ドイツ、ベルギー、イギリス、カナダ、ハンガリー、マレーシアなどでF1のレースを取材して回る日が来るなんて、夢にも思っていなかった。
■ いつも「クルマ」が身近にいた
それにしても、そもそも自分はなぜクルマに夢中になったんだろう?
スタイルがかっこいい。
速いのがかっこいい。
レーサーがかっこいい。
メーカーによって際立つ個性がかっこいい。
それぞれのメーカーが培ってきた歴史がかっこいい。
クルマにまつわる伝説がかっこいい。
今思えば、それらいくつもの要素が絡み合って、クルマの魅力に絡め取られて、好きだという思いを抱えたままで思春期を迎えていったようだ。
だから、基本的に「クルマ」は、自分の隣にいつもいた。
映画を見ていても、そこに出てくるクルマが気になる。
小説を読んでいても、例えば片岡義男に傾倒したりする。
「GTロマン」というコミックに夢中になる。
まだ免許を取れないうちは、そんな風にして映画や小説や音楽といった自分の興味の中に「クルマ」を見ようとしていたかもしれない。
10代の終わりによく聞いた小山卓治というシンガーの『ひまわり』という歌の中に、こんな美しい歌詞が出てくる。
ガソリンが水たまりに虹をつくる道の向こう
すすけた赤い屋根が続いてる
ハイブリッド車はもちろん、いまどきのガソリン車だって、ガソリンやオイルが漏れるなんてことはない。でも僕の子どもの頃は、そんな「道端の水たまりの虹」が、町のあちこちで見られた。
そんな風景も含めて、僕の中に「クルマ」というものがインプットされているんだと思う。
■ エコの名の下に変わっていく「クルマ」
前振りが長くなった。今回のテーマにクルマを選んだはいいものの、それではあまりに「テーマが大きすぎる」ということで、「クルマの選び方」という風に絞り込むことにした。
もちろん、それでも十分に「大きな」テーマではあるのだが、そこに僕なりの「細かなこだわり」を含ませることで、なんとかカタチにしていければと思う。
最初は、「クルマの選び方」+「エンジン」だ。
2000年代に入ってからというもの、ご多分にもれずクルマも環境性能のレベルアップが求められてきた。特に色濃く影響を受けているのが動力だ。
90年代の終わり、三菱自動車がGDIという直噴エンジンを商用化した。普通のエンジンはガソリンと空気を混ぜた混合気をピストンの中に送り込んで、それを爆発させて動力とするが、GDIはガソリンを直接送り込んで爆発させる。それだけ燃焼効率が高まり、無駄が省ける=燃料消費率が高まるというわけだ(すごくざっくりと説明してます)。
そのエンジンがリリースされた頃、僕は某情報誌で新車インプレッションのコーナーの編集を担当していた。そこで、このGDIエンジンがどれだけ燃費がいいのか、実際に検証しようということになり、東京から伊勢神宮まで出かけたことがある。往路と復路で走り方を変えて燃費がどれくらい変わるかという実験をしたのだ。
往路はとにかく燃費優先。東名高速の制限速度を下回るスピードで、回転数を抑えて走った。復路は制限速度内(ということにしておく)で、回転数は気にせずに走った。
その頃は、そんな企画をやらせてくれるくらい、おおらかな時代だったのだ(遠い目…)。
そして、おおらかな時代が遠ざかっていくのと比例するかのように、動力も変わっていく。もっと根本的なところから見直そうとして出てきたのが、ハイブリッドエンジンだ。ガソリンと電気を組み合わせ、それぞれの得意なところを生かして、燃焼消費を効率化しようというものである。
そのハイブリッドエンジンを搭載した初代プリウスがリリースされたのは97年。そのインプレッションも、前述の情報誌で担当した記憶がある。
クリーンなイメージで写真を撮ろうということになって、清里高原に出かけた。初めて乗るハイブリッド車でなれなかったのは、モーターで走る時に無音になること。運転席にいても音は聞こえないし、振動もないので、どのタイミングでアクセルを踏み込めばいいのか、よくわからなかったことを覚えている。
そして90年代の終わりに登場したGDIとハイブリッドが時代を先取りしていたパワーユニットだったことは、2000年代になるとより明確になってくる。2005年には環境省が主導する形で「チーム・マイナス6%」という国民運動がスタート。その一環としてPRされた「エコドライブ」という言葉が世の中に出始めると、それを受け止めるかのように、新たなハイブリッド車や100%電気自動車のリリースが始まる。
そして今。その流れは、ますます拍車がかかっている。世界的に見れば、自動車メーカー以外のベンチャーが続々と電気自動車をリリース。自動運転やコネクティッドカーといった先進技術との組み合わせとして考えても、ガソリン車より電気自動車に優位性があることも、勢いを加速させている理由だろう。
■ ガソリン&エンジンはなくなってしまうのか?
さらにヨーロッパ諸国の中には、ごく近い将来、ガソリン車の製造を禁止する動きすら出ている。
- ノルウェイ 2030年から電気自動車とハイブリッド車のみ販売
- オランダ 2025年から電気自動車のみ販売
- フランス 2040年までにガソリン車とディーゼル車の販売を禁止
- イギリス 2040年からガソリン車とディーゼル車の販売を禁止
もちろん、アメリカ、中国、インドでも「ガソリン車禁止、電気自動車歓迎」の機運は高まるばかり。日本は現時点で明確な線引きこそしてはいないが、いずれ世界の潮流を追随することになるはずだ。
ガソリンエンジン NO!
電気自動車 YES!
これはもう仕方ないことだ。止められないし、止まらない。
だが、しかし、だ。
その流れに乗ることが、すべてなのだろうか?
自分が子どもの頃から憧れ続けた「クルマ」と、
電気自動車やハイブリッド車は、決してイコールではない。
そこで、いま僕がクルマを選ぶとしたら、やっぱり「ガソリン車」を買いたい。
だって、いまならまだ手に入れることができるんだから。
■ やっぱり、エンジンが好き!
電気自動車やハイブリッドになくて、ガソリン車にあるものはなんだろうか?
- 匂い
- 振動
- 音
こんな要素、いらないだろうと言われれば、それまでだ。それにガソリン車は手間もかかる。
例えば僕はいま、中古で購入した13年落ちのセダンに乗っている。リリース当時は燃費に優れると言われた直噴エンジン(GDIと同じ形式)を搭載しているが、現代レベルで言えば、とても燃費がいいとは言えない。
朝の動き出しにも気を使う。特に最近は寒くなってきたこともあり、走り出す時には暖気をするようにしている。
すぐにアクセルを踏み込んで回転を上げるのではなく、ゆっくりと走り出し、水温計の上がり具合を見ながら、ある程度エンジンが温まり、エンジンの音が安定してきたことを感じてから、アクセルを強く踏み込むようにしている。
そんな所作も時間も煩わしいと感じる人もいるだろう。でも、これは僕にとってはクルマと対話する時間であり、なかなかに楽しい時間なのだ。
こんな楽しみ方ができるのも、ガソリンエンジンのクルマだからこそできる。
さらにガソリンエンジンには、いろいろなタイプがある。
例えば、4気筒とか、6気筒とか、8気筒とか、12気筒とか。
例えば、直列とか、並列とか、水平対向とか、V型とか、ロータリーとか。
例えば、NA(自然吸気)とか、ターボとか、スーパーチャージャーとか。
例えば、660CCとか、2000CCとか、4500CCとか。
形式も違えば、サイズも違う。それが変わるとパワーも違うし、乗り心地も違う。
たとえ同じ形式とサイズのエンジンだったとしても、チューニングによってパワーの出方は変わってくる。同じ直列4気筒2000CCのエンジンでもスポーツカーとファミリー向けセダンでは、性格もパワーの出方も違ってくるのだ。
だから、車選びは複雑になる。
そして複雑になるほどに、車選びが楽しくなるわけだ。
僕が最初に買ったクルマの同型モデル。フォルクスワーゲン1303S。写真と同じようにバンパーレスだった。80年代の終わり頃までは、まだそんな仕様も許されるくらいにはおおらかであった。当時、40万円で買ったんだけど、最近、自宅近くの中古車屋で、やはり40万円のプライスタグがついた1303Sを見かけた。価値が変わらないクルマだ。エンジンはワーゲン伝統の水平対向4気筒の空冷エンジン。そもそもドイツの国民車として作られたクルマなので、特筆すべきパフォーマンスはなし。のんびり走るのが一番。学生時代、友達や彼女を乗せて、こいつであちこち出かけたものです
現在の愛車。トヨタ アベンシス。トヨタのクルマだけど、フランスを拠点とするトヨタ・ヨーロッパ・デザイン・ディベロップメントがデザインを手がけ、イギリスのトヨタ・マニュファクチャリングUKが生産を担当。基本的にはヨーロッパで販売するために作られたクルマで、日本では逆輸入車という扱い。それゆえ足回りやシートなどはヨーロッパ仕様になっている。エンジンは日本で販売される他のクルマに搭載されているものと同じ。足回りが勝っているクルマで、下りの中速コーナーとかを走らせると意外と楽しい