クルマを選ぶ①「エンジンが好き」
さて、新しいブログを始めることになった。
テーマは「クルマ」だ。
なぜクルマかといえば、自分のこれまでの人生で、一番長い時間興味を持ち続けているものがクルマだったからだ。
はじまりは小学生の時。毎週の発売日を楽しみにしていた「週刊少年ジャンプ」で、名作「サーキットの狼」の連載が始まり、すぐに夢中になった。
この漫画をきっかけに「スーパーカー・ブーム」というのが巻き起こる。僕が暮らしていた千葉でも、「スーパーカー・フェア」的なものが行われ、その度に親にねだっては出かけて行き、フェラーリだ、ポルシェだ、ランボルギーニだ、マセラティだと大騒ぎしながら、見て回った。
F1と出会ったのもその頃。76年に富士スピードウェイで、日本で初めてF1が開催された。もちろん、僕は…見に行ってはいない。TBSで放送されたテレビを見ながら、やれフェラーリだ、タイレルだ、マクラーレンだと騒いでいた。
まさかそれから20年くらいのちに、自分がF1の専門誌の編集部に入り、オーストリア、ドイツ、ベルギー、イギリス、カナダ、ハンガリー、マレーシアなどでF1のレースを取材して回る日が来るなんて、夢にも思っていなかった。
■ いつも「クルマ」が身近にいた
それにしても、そもそも自分はなぜクルマに夢中になったんだろう?
スタイルがかっこいい。
速いのがかっこいい。
レーサーがかっこいい。
メーカーによって際立つ個性がかっこいい。
それぞれのメーカーが培ってきた歴史がかっこいい。
クルマにまつわる伝説がかっこいい。
今思えば、それらいくつもの要素が絡み合って、クルマの魅力に絡め取られて、好きだという思いを抱えたままで思春期を迎えていったようだ。
だから、基本的に「クルマ」は、自分の隣にいつもいた。
映画を見ていても、そこに出てくるクルマが気になる。
小説を読んでいても、例えば片岡義男に傾倒したりする。
「GTロマン」というコミックに夢中になる。
まだ免許を取れないうちは、そんな風にして映画や小説や音楽といった自分の興味の中に「クルマ」を見ようとしていたかもしれない。
10代の終わりによく聞いた小山卓治というシンガーの『ひまわり』という歌の中に、こんな美しい歌詞が出てくる。
ガソリンが水たまりに虹をつくる道の向こう
すすけた赤い屋根が続いてる
ハイブリッド車はもちろん、いまどきのガソリン車だって、ガソリンやオイルが漏れるなんてことはない。でも僕の子どもの頃は、そんな「道端の水たまりの虹」が、町のあちこちで見られた。
そんな風景も含めて、僕の中に「クルマ」というものがインプットされているんだと思う。
■ エコの名の下に変わっていく「クルマ」
前振りが長くなった。今回のテーマにクルマを選んだはいいものの、それではあまりに「テーマが大きすぎる」ということで、「クルマの選び方」という風に絞り込むことにした。
もちろん、それでも十分に「大きな」テーマではあるのだが、そこに僕なりの「細かなこだわり」を含ませることで、なんとかカタチにしていければと思う。
最初は、「クルマの選び方」+「エンジン」だ。
2000年代に入ってからというもの、ご多分にもれずクルマも環境性能のレベルアップが求められてきた。特に色濃く影響を受けているのが動力だ。
90年代の終わり、三菱自動車がGDIという直噴エンジンを商用化した。普通のエンジンはガソリンと空気を混ぜた混合気をピストンの中に送り込んで、それを爆発させて動力とするが、GDIはガソリンを直接送り込んで爆発させる。それだけ燃焼効率が高まり、無駄が省ける=燃料消費率が高まるというわけだ(すごくざっくりと説明してます)。
そのエンジンがリリースされた頃、僕は某情報誌で新車インプレッションのコーナーの編集を担当していた。そこで、このGDIエンジンがどれだけ燃費がいいのか、実際に検証しようということになり、東京から伊勢神宮まで出かけたことがある。往路と復路で走り方を変えて燃費がどれくらい変わるかという実験をしたのだ。
往路はとにかく燃費優先。東名高速の制限速度を下回るスピードで、回転数を抑えて走った。復路は制限速度内(ということにしておく)で、回転数は気にせずに走った。
その頃は、そんな企画をやらせてくれるくらい、おおらかな時代だったのだ(遠い目…)。
そして、おおらかな時代が遠ざかっていくのと比例するかのように、動力も変わっていく。もっと根本的なところから見直そうとして出てきたのが、ハイブリッドエンジンだ。ガソリンと電気を組み合わせ、それぞれの得意なところを生かして、燃焼消費を効率化しようというものである。
そのハイブリッドエンジンを搭載した初代プリウスがリリースされたのは97年。そのインプレッションも、前述の情報誌で担当した記憶がある。
クリーンなイメージで写真を撮ろうということになって、清里高原に出かけた。初めて乗るハイブリッド車でなれなかったのは、モーターで走る時に無音になること。運転席にいても音は聞こえないし、振動もないので、どのタイミングでアクセルを踏み込めばいいのか、よくわからなかったことを覚えている。
そして90年代の終わりに登場したGDIとハイブリッドが時代を先取りしていたパワーユニットだったことは、2000年代になるとより明確になってくる。2005年には環境省が主導する形で「チーム・マイナス6%」という国民運動がスタート。その一環としてPRされた「エコドライブ」という言葉が世の中に出始めると、それを受け止めるかのように、新たなハイブリッド車や100%電気自動車のリリースが始まる。
そして今。その流れは、ますます拍車がかかっている。世界的に見れば、自動車メーカー以外のベンチャーが続々と電気自動車をリリース。自動運転やコネクティッドカーといった先進技術との組み合わせとして考えても、ガソリン車より電気自動車に優位性があることも、勢いを加速させている理由だろう。
■ ガソリン&エンジンはなくなってしまうのか?
さらにヨーロッパ諸国の中には、ごく近い将来、ガソリン車の製造を禁止する動きすら出ている。
- ノルウェイ 2030年から電気自動車とハイブリッド車のみ販売
- オランダ 2025年から電気自動車のみ販売
- フランス 2040年までにガソリン車とディーゼル車の販売を禁止
- イギリス 2040年からガソリン車とディーゼル車の販売を禁止
もちろん、アメリカ、中国、インドでも「ガソリン車禁止、電気自動車歓迎」の機運は高まるばかり。日本は現時点で明確な線引きこそしてはいないが、いずれ世界の潮流を追随することになるはずだ。
ガソリンエンジン NO!
電気自動車 YES!
これはもう仕方ないことだ。止められないし、止まらない。
だが、しかし、だ。
その流れに乗ることが、すべてなのだろうか?
自分が子どもの頃から憧れ続けた「クルマ」と、
電気自動車やハイブリッド車は、決してイコールではない。
そこで、いま僕がクルマを選ぶとしたら、やっぱり「ガソリン車」を買いたい。
だって、いまならまだ手に入れることができるんだから。
■ やっぱり、エンジンが好き!
電気自動車やハイブリッドになくて、ガソリン車にあるものはなんだろうか?
- 匂い
- 振動
- 音
こんな要素、いらないだろうと言われれば、それまでだ。それにガソリン車は手間もかかる。
例えば僕はいま、中古で購入した13年落ちのセダンに乗っている。リリース当時は燃費に優れると言われた直噴エンジン(GDIと同じ形式)を搭載しているが、現代レベルで言えば、とても燃費がいいとは言えない。
朝の動き出しにも気を使う。特に最近は寒くなってきたこともあり、走り出す時には暖気をするようにしている。
すぐにアクセルを踏み込んで回転を上げるのではなく、ゆっくりと走り出し、水温計の上がり具合を見ながら、ある程度エンジンが温まり、エンジンの音が安定してきたことを感じてから、アクセルを強く踏み込むようにしている。
そんな所作も時間も煩わしいと感じる人もいるだろう。でも、これは僕にとってはクルマと対話する時間であり、なかなかに楽しい時間なのだ。
こんな楽しみ方ができるのも、ガソリンエンジンのクルマだからこそできる。
さらにガソリンエンジンには、いろいろなタイプがある。
例えば、4気筒とか、6気筒とか、8気筒とか、12気筒とか。
例えば、直列とか、並列とか、水平対向とか、V型とか、ロータリーとか。
例えば、NA(自然吸気)とか、ターボとか、スーパーチャージャーとか。
例えば、660CCとか、2000CCとか、4500CCとか。
形式も違えば、サイズも違う。それが変わるとパワーも違うし、乗り心地も違う。
たとえ同じ形式とサイズのエンジンだったとしても、チューニングによってパワーの出方は変わってくる。同じ直列4気筒2000CCのエンジンでもスポーツカーとファミリー向けセダンでは、性格もパワーの出方も違ってくるのだ。
だから、車選びは複雑になる。
そして複雑になるほどに、車選びが楽しくなるわけだ。
僕が最初に買ったクルマの同型モデル。フォルクスワーゲン1303S。写真と同じようにバンパーレスだった。80年代の終わり頃までは、まだそんな仕様も許されるくらいにはおおらかであった。当時、40万円で買ったんだけど、最近、自宅近くの中古車屋で、やはり40万円のプライスタグがついた1303Sを見かけた。価値が変わらないクルマだ。エンジンはワーゲン伝統の水平対向4気筒の空冷エンジン。そもそもドイツの国民車として作られたクルマなので、特筆すべきパフォーマンスはなし。のんびり走るのが一番。学生時代、友達や彼女を乗せて、こいつであちこち出かけたものです
現在の愛車。トヨタ アベンシス。トヨタのクルマだけど、フランスを拠点とするトヨタ・ヨーロッパ・デザイン・ディベロップメントがデザインを手がけ、イギリスのトヨタ・マニュファクチャリングUKが生産を担当。基本的にはヨーロッパで販売するために作られたクルマで、日本では逆輸入車という扱い。それゆえ足回りやシートなどはヨーロッパ仕様になっている。エンジンは日本で販売される他のクルマに搭載されているものと同じ。足回りが勝っているクルマで、下りの中速コーナーとかを走らせると意外と楽しい